ゴルフ場経営において、年間1000万円を超えることもある「固定資産税」は重大なコスト負担です。なぜゴルフ場の税金は高いのか?それは敷地全体が「雑種地」として高額に評価されているためです。しかし、この評価は見直しが可能です。プレーに無関係な樹林地などを「山林」として現況評価し直す「現況地目変更」により、固定資産税は大幅に減額できる可能性があります。
ゴルフ場の経営者にとって、固定資産税は非常に大きなコスト負担となっています。データによれば、1ゴルフ場あたりの固定資産税が年間1000万円を超えるケースも珍しくありません。なぜ、ゴルフ場の固定資産税はこれほど高額になるのでしょうか。それには、ゴルフ場特有の「地目」と「評価方法」が関係しています。
固定資産税は、土地の現況や利用目的に応じて定められる「地目」に基づいて課税されます。国税庁の指針によると、ゴルフ場は、遊園地や運動場、競馬場などと同様に「雑種地」という地目に分類されます。固定資産税は、その土地の時価評価額(評価額)に対して課税されるのが原則です。
ゴルフ場は広大な土地を必要としますが、そのすべてが「雑種地」として一体で評価されることが一般的でした。この「雑種地」という分類が、宅地などと同様に高い評価額につながる一因となっています。登記上の地目が「山林」や「原野」であったとしても、実際の利用状況がゴルフ場であれば、現況を優先して「雑種地」として課税されることになります。
ゴルフ場の固定資産評価額の算出方法は、総務省の「固定資産評価基準」によって定められています。具体的には、ゴルフ場を開設するために要した土地の「取得価額」と「造成費」を合計した価額を基準として評価額を求めます。
造成費とは、コースを造成するためにかかった費用のことですが、芝の購入費や植付費、その他カートやクラブハウス内の設備など、償却資産として別途固定資産税(償却資産税)の課税対象となるものは除かれます。この「取得価額+造成費」を基準とし、さらにゴルフ場の位置や利用状況などを考慮して最終的な評価額が決定されます。価格事情に変動があった場合や、取得価額・造成費が不明な場合は、近隣の土地の価額や最近の造成費から推定して評定されます。
ゴルフ場の敷地は、もともと「山林」であった場所を開発して造られるケースがほとんどです。しかし、課税地目は「山林」ではなく「雑種地」となります。一般的に、同じ面積の土地であっても、「山林」そのものよりも、ゴルフ場という付加価値がつけられた「雑種地」の方が、資産価値は高いと評価されます。
土地の取得価額を見ても、単なる山林として購入するよりも、ゴルフ場用地として購入する方が高額になります。さらにそこへ高額な造成費が加わるため、評価額の基準が大きく跳ね上がります。そのため、「雑種地」(ゴルフ場)の評価額は「山林」の評価額を大幅に上回ることが通常であり、結果として固定資産税も高額になるのです。
高額な固定資産税はゴルフ場経営の大きな課題ですが、その課税評価額を見直す具体的な手法が存在します。それが「現況地目変更に伴う課税見直し」です。これは、ゴルフ場の敷地すべてを一体の「雑種地」として評価するのではなく、実際の利用状況(現況)に合わせて評価を見直すよう申請する取り組みです。
ゴルフ場の広大な敷地には、フェアウェイやグリーン、バンカーといったプレーに直接使用される部分以外にも、コース間に広がる樹林帯や、敷地の外周にある法面(のりめん)、調整池など、プレーには直接関わりのないエリアが多数存在します。これらは「保存樹林地」や「残地山林」とも呼ばれます。
「現況地目変更」とは、これらのエリアを「雑種地」という高い評価から、実態に即した「山林」などの低い評価に変更してもらうよう、市町村の税務当局に申請し、課税見直しを求める手続きです。従来はゴルフ場敷地全体が一体評価されがちでしたが、現在では「ゴルフ場がその効用を果たす上で必要がないと認められる部分」は区分して評価するよう、総務省の告示でも改正されています。
近年、ゴルフ場のコース管理において「ナチュラルエリア(ネイティブエリア)」と呼ばれる非管理エリアを意図的に設ける動きが広がっています。これは、コース管理の人材不足やコスト高騰を背景に、管理面積を縮小し、その分の労働資源をプレーの満足度に直結するグリーンやフェアウェイの品質維持に集中させるという経営戦略の一環です。
このナチュラルエリアは、サスティナビリティ(持続可能性)の観点からも注目されており、海外だけでなく日本国内でも徐々に導入が進んでいます。こうした管理されていないナチュラルエリアは、プレーに直接必要とは言えない部分として、「山林」や「原野」と同様の現況にあると主張できる可能性があります。これも「現況地目変更」の対象として申請できるエリアの一つです。
ゴルフ場をプレーしていると、ホールとホールの間が深い木々でセパレートされている「樹林エリア」が目に入ります。こうしたエリアは、ゴルフ場の景観を保つ役割はあっても、ゴルフプレーそのものの効用を果たす上で必須とは言えない部分です。しかし、これまでの課税実務では、これらの樹林エリアもゴルフ場用地の一部、すなわち「雑種地」として一体評価されてきました。
「現況地目変更」の申請では、まさにこの「プレーに無関係な樹林エリア」を「山林」として区分評価するよう求めます。航空写真や測量データを基に、ゴルフ場用地(雑種地)と山林の境界を明確にし、現況が「山林」である部分の地目を変更してもらうことで、課税標準額を下げ、結果として固定資産税の減額を実現することができます。
固定資産税の減額を実現するためには、ゴルフ場側から市町村の税務当局に対して「課税見直し」の申請を行う必要があります。このプロセスは、従来非常に手間がかかるものでしたが、近年はデジタル技術の活用により迅速化しています。また、申請には適切なタイミングがあります。
本来、ゴルフ場敷地内の「雑種地」と「山林」を区別して課税見直しを申請するためには、まず登記を変更する必要がありました。そのためには、土地の境界を確定させるための「境界立会い」や、正確な面積を出すための「測量」といった作業が不可欠です。
これらの手続きは非常に煩雑で、多大な時間と費用を要します。さらに、登記を変更した後、役所側でそれを再評価し、実際の課税に反映させるまでにも時間がかかります。一般的に、従来の方法では課税見直しがすべて完了するまでに約3年から5年という長い期間が必要とされていました。この負担の大きさが、見直し申請のハードルとなっていました。
しかし、近年はデジタル技術の進歩により、このプロセスが大幅に短縮可能になりました。具体的には、ゴルフ場の最新の「航空写真」と、現在の課税地目がわかる「地番現況図(現況図面)」をデジタルデータ上で重ね合わせる手法が用いられます。
これにより、現地での煩雑な測量や境界立会いを(少なくとも初期調査段階では)行うことなく、「雑種地」として課税されているエリアと、現況が「山林」であるエリアを高い精度で迅速に区分けし、調査用資料を作成できます。この技術革新により、申請から課税見直しの完了までを約3〜4ヶ月という短期間で実現することも可能になっています。
固定資産税の評価額は、市町村によって3年に1度見直されます。これを「評価替え(ひょうかがえ)」と呼びます。多くのゴルフ場は、この評価替えのタイミングに合わせて、市町村と折衝し、課税評価の是正を要望してきました。
総務省が2008年に「ゴルフ場がその効用を果たす上で必要がないと認められる部分を除く」と告示を改正したのも、この評価替えを前にしたタイミングでした。評価替えの年は、自治体側も評価基準を見直す機会となるため、区分評価や比準方式の変更(例:宅地比準から山林比準へ)といった大きな見直しを交渉する上で、重要なタイミングであると言えます。
固定資産税の見直しは、ゴルフ場経営におけるキャッシュアウトを直接的に減らす、非常に有効な「守り」のコスト削減策です。しかし、ゴルフ場経営は固定資産税以外にも、人件費、コース管理費、集客コストなど多くの課題を抱えています。持続可能な経営を実現するためには、削減したコストを原資に、次なる一手も必要です。
固定資産税の減額に成功し、年間の支出が数百万円単位で削減できたとしても、それはあくまで経営基盤の安定化(守り)に過ぎません。日本のゴルフ場業界は、全国平均の営業利益率が約3.5%(2021年調査)と決して高くない状況にあり、コスト削減と同時に「攻め」の戦略、すなわち収益性の改善も求められます。
固定資産税の見直しで得られたキャッシュフローを、コース管理の品質向上や顧客満足度を高めるサービスに再投資し、集客力やリピート率を高めることが重要です。守りで体力を温存し、攻めで収益を伸ばすという両輪のアプローチが、将来の経営を左右します。
ゴルフ場経営における最大のコスト要因の一つが「人件費」です。特にコース管理の人材不足や、フロント・予約管理などのオペレーションコストは常に経営の課題となります。固定資産税という「土地」にかかるコストを見直すのと同様に、これら「人」にかかるコストも見直さなければなりません。
そこで不可欠となるのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進です。例えば、ナチュラルエリアの導入がコース管理の労働資源を主要エリアに集中させ効率化するように、業務プロセス全体をデジタル化することで、最小限の人員で高品質な運営を目指すことが可能になります。経営コストの圧縮にはDXの視点が不可欠です。
本記事では、ゴルフ場経営における大きな負担である固定資産税の仕組みと、その具体的な減額方法について解説しました。ゴルフ場の固定資産税は、敷地全体が「雑種地」として一体評価され、さらに「取得価額+造成費」を基準とするため高額になりがちです。
最も重要なのは、固定資産税の見直しで得られた経営余力を、次の戦略に活かすことです。人件費の最適化や顧客満足度の向上を実現する「ゴルフ場システムの導入・リプレイス」といったDX推進こそが、持続可能なゴルフ場経営を実現する鍵となります。まずは固定資産税という「守り」のコスト削減を確実に実行し、それを「攻め」の経営改善につなげる第一歩としてみてはいかがでしょうか。
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