ゴルフ場経営が「儲からない」と言われる構造的コストや価格競争、預託金問題などを解説。利益を生むゴルフ場へ転換するための具体的な条件を提言します。
多くのゴルフ場経営者が頭を悩ませる「儲からない」という深刻な課題。ゴルフ愛好者の声とは裏腹に、なぜ多くのゴルフ場が収益確保に苦しんでいるのでしょうか。その背景には、単なる来場者数の減少だけでは片付けられない、根深い構造的な問題が存在します。本記事では、ゴルフ場経営を圧迫する根本的な要因を多角的に分析し、持続可能な「儲かるゴルフ場」へと転換するための道筋を探ります。
ゴルフ場経営が利益を出しにくい最大の要因は、その特異なコスト構造にあります。ゴルフ場は、他のビジネスとは比較にならないほどの広大な土地を必要とします。一般的に18ホールのゴルフ場を運営するには、約100万㎡(約30万坪)もの敷地が必要とされ、その土地の取得費用や賃借料が経営に重くのしかかります。
さらに、その広大な土地を常にベストなコンディションに保つための維持管理費は莫大です。グリーンの芝生は非常にデリケートであり、専門知識を持つグリーンキーパーによる日々のメンテナンスが欠かせません。芝刈り、肥料・農薬の散布、散水、バンカーの整備など、コース管理にかかる人件費、機械の維持費、消耗品費は、来場者数に関わらず発生する固定費であり、収益を圧迫する大きな要因となっています。
加えて、税負担も無視できません。広大な土地を所有することによる固定資産税はもちろんのこと、ゴルフ場特有の「ゴルフ場利用税」も存在します。これは利用者が負担する税金ではありますが、ゴルフ場が特別徴収義務者として徴収・納税する義務を負っており、プレー料金に上乗せされることで、実質的な価格競争力を削ぐ一因ともなっています。これらの高額な固定費構造が、ゴルフ場経営の損益分岐点を引き上げ、「儲かりにくい」体質を生み出しているのです。
1990年代のバブル崩壊後、日本のゴルフ場業界は大きな転換期を迎えました。経営破綻したゴルフ場を外資系ファンドなどが安価で買収し、運営を開始。彼らは徹底したコスト削減と、集客を最優先した低価格戦略を打ち出し、市場全体のプレー料金を引き下げる「価格破壊」を引き起こしました。これにより、既存のゴルフ場も追随せざるを得なくなり、熾烈な価格競争の時代へと突入しました。
この流れを加速させたのが、GDO(ゴルフダイジェスト・オンライン)や楽天GORAといったゴルフ場予約ポータルサイトの台頭です。これらのサイトは圧倒的な集客力を誇り、ゴルフ場にとって欠かせない予約チャネルとなりました。しかし、その一方で、送客手数料としてプレー料金の数%を支払う必要があり、利益率を直接的に圧迫する要因となっています。
さらに、ポータルサイト上では近隣のゴルフ場料金が一覧で比較されるため、利用者はより安いプランに流れやすくなります。結果として、ゴルフ場は常に価格を意識せざるを得ず、独自の価値を価格に転嫁しにくい状況が生まれています。ポータルサイトへの依存度が高まるほど、自社の利益コントロールが難しくなるというジレンマを抱えているのです。
日本のゴルフ場の多くは、建設資金を調達するために「預託金会員制」という独自のシステムを採用してきました。これは、会員希望者から「預託金」という形でまとまった資金を預かり、それを元手にゴルフ場を建設・運営する仕組みです。会員は優先的なプレー権などを得ますが、この預託金は、法律上はゴルフ場が会員から借りている「負債」であり、一定の据置期間が経過すれば、会員からの請求に応じて返還しなければなりません。
バブル期にはゴルフ会員権が投機対象となり、数千万円、時には億単位で取引されました。しかし、バブル崩壊と共に会員権価格は暴落。多くの会員が退会し、預託金の返還を求めました。ゴルフ場側はすでに建設費などで資金を使い切っており、返還原資がありません。この預託金返還問題が引き金となり、数多くのゴルフ場が法的整理や倒産に追い込まれました。現在もこの「負債」を抱え、資金繰りに苦しむゴルフ場は少なくなく、新たな設備投資などを阻む足かせとなっています。
バブル期に計画・建設されたゴルフ場の多くは、豪華絢爛なクラブハウスを備えています。広々としたエントランス、高級レストラン、大理石をふんだんに使った浴室、大人数を収容できるコンペルームなど、当時の「接待ゴルフ」の需要に応えるための過剰ともいえるスペックが標準でした。
しかし、ゴルフの楽しみ方が多様化し、手軽さを求めるカジュアルなゴルファーが増えた現代において、これらの豪華な施設は必ずしも利用者ニーズと合致しなくなっています。むしろ、その巨大な施設を維持するための光熱費、清掃費、修繕費、そして人件費が、経営を圧迫する重いコストとなっています。利用者数が減少する中で、使用頻度の低い施設を維持し続けることは、収益性を著しく低下させます。時代に合わせて施設をスリム化したり、有効活用したりする経営判断が求められていますが、その改修にもまた多額の投資が必要となるというジレンマを抱えています。
厳しい市場環境の中でも、高い収益性を維持しているゴルフ場は確かに存在します。そうした「儲かるゴルフ場」には、共通するいくつかの条件が見られます。
ゴルフ場経営が「儲からない」と言われる背景には、高コスト体質、過当な価格競争、そして預託金問題といった、業界特有の歴史的・構造的な課題が複雑に絡み合っています。過去の成功体験や従来の慣習にとらわれたままでは、時代の変化に対応し、収益を確保することはますます困難になるでしょう。
これからのゴルフ場経営に求められるのは、まず自社の置かれた状況と課題を客観的に直視することです。その上で、自社の強みは何か、どのような顧客に価値を提供できるのかを再定義し、明確な戦略を描く必要があります。事業の再構築(リストラクチャリング)、業務効率化のためのDX推進、あるいは他社とのアライアンスやM&Aによる再編も、有効な選択肢となり得ます。本質的な課題から目をそらさず、変革への一歩を踏み出すことこそが、「儲かるゴルフ場」への唯一の道と言えるでしょう。
シン・クラブメイトは、40年以上にわたりゴルフ場運営の支援を行い、老舗ゴルフ場からも信頼される「富士テレコム」が提供するクラウド型のゴルフ場基幹システムです。
ゴルフ場の実情を熟知した企業が構築した、ゴルフ場が真に求める機能を搭載したシステムを導入し、他社との差別化を図りましょう!
従業員‧スタッフ向けの営業状況把握のための画⾯と、経営者‧⽀配⼈向けの集客・売上着地予測の画⾯をそれぞれ⽤意。⽴場によっては不要となる情報が表⽰されず、使いやすくなっています。
担当営業‧専任SE‧専任インストラクターなど、業種特化したゴルフ場様専任チームが導⼊から稼働まで⽀援。遠隔操作によるサポートも可能です。
クラウド対応により、スマートフォンでのチェックイン‧オンライン決済などいわゆる「スマートラウンド」のスムーズな導⼊を目指せます。また、システムの⽼朽化や属⼈化とも無縁です。